古橋の生地って、なんで“ ふっくら ”してるの?
これまで、古橋織布では
Instagramやオンラインショップで
風合いの良さをくり返し伝えてきました。
そもそも、どうして風合いが良く
“ふっくら”しているか。
今回は、もっと深いところまで
お話ししたいと思います。
まず、織物は
タテ糸とタテ糸の間を
ヨコ糸を乗せたシャトルが通り、
繰り返し織り込まれることで
できあがります。
ヨコ糸の通り道、
タテ糸とタテ糸の間のスペースを
「開口(かいこう)」と言います。
シャトル織機は、
大きなシャトルがヨコ糸を運ぶため、
この開口が大きくなっています。
一般的に、大量生産されるアパレル向けの生地は、
シャトル(杼)がない高速織機で織られ、
「シャトルレス織機」(無杼織機)と言います。
シャトルレス織機のひとつ、
レピア織機は、
槍のような「レピア」という部品が
ヨコ糸を運びます。
現代において、世の中に一番多く流通している生地は、
エアジェットやウォータージェットという高速織機で織られ、
ヨコ糸は目にも留まらぬ速さで、空気や水の噴射によって運ばれます。
どちらも、シャトル織機に比べて、
開口は小さくなります。
シャトル織機は、開口が大きいため、
タテ糸が上下に大きく開き、
他の織機と比べて、
織るスピードは遅くなります。
そうなると、
”どうして、令和のこの時代に
未だにシャトル織機を使い続けてるの?”
って疑問に思いますよね。
それは、シャトル織機にしか生み出せない
“ふっくら”とする風合いの良さがあり、
それに惚れ込んでしまったからです。
“ふっくら”する理由の一つ。
シャトル織機は、
タテ糸が上下に大きく引っ張られるので、
必然的に多くのタテ糸を使います。
そして、タテ糸の波打ちの高さが大きくなるんです。
“ふっくら”するもう一つの理由は
ヨコ糸の運び方です。
シャトル織機は、
ヨコ糸が管に巻かれ、
シャトルの中にセットされます。
セットしたヨコ糸は、
ゆったりとしたテンションで
斜めに走り、左右を往復します。
そのため、シャトル織機は
ヨコ糸には余計な負担がかからず、
糸の断面は「丸」の状態のまま。
一方で、シャトルレス織機は、
織機に固定された糸のコーンから、
そのまま直接引っ張られてきて、
まっすぐ一直線で
右から左に一方通行で織り込まれます。
糸を引っ張っている分、
糸に負荷がかかり、糸の断面は
「楕円形(だえんけい)」に
つぶれてしまいます。
つまり、
シャトル織機では、
本来、糸が持つ風合いをそのまま織ることができるので、
“ ふっくら ”と仕上がるのです。
最後に、もう一つ。
織り上がった後には、
一反ずつ揉み洗い加工をしています。
大量生産品とは異なり、
手間ひまのかかる工程を踏んでいます。
そうすることで、
シャトル織機で織り上げた“ ふっくら ”した生地が、
より、“ ぎゅっと ”目が詰まり、
肉厚で豊かな風合いが生まれるのです。
こうして、長年お付き合いのある
加工のプロフェッショナルに支えられ、
古橋織布の“ふっくら”は生まれます。